好きだけれども参入をためらう業種

医療・サービス業から小売り・運送・製造業と様々な業種の経営者支援をする機会があります。 その中でも、大好きだけど自分が新しく事業を起こすとしたらためらう業種があります。飲食業です。 私は20年以上前の学生時代、レストランで3年アルバイトをしました。 福岡市中央区天神の当時流行ったレストランバーで2.5年と福岡市西区小戸のヨットハーバーにあったフレンチレストランで半年です。 この記事を書く気持ちになったのは、「二つ星の料理人」と「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」の二つの映画を観たからです。 飲食業が魅力的なのは、お客さんの喜ぶ顔を目の前で見られることでしょう。 私自身の経験として、最初はなかなかお客さんに喜んでもらえませんが、接客サービスが上手になるとパーティの予約が指名で入ったり、お客さんに感謝の手紙をもらうこともありました。これはあらゆる仕事に共通する働く醍醐味です。 サービスする(奉仕する)ということがなにかも学びました。 ある時私が担当するホールで物が落ちた音がしたので、見に行ってそれがフォークであることを確認して、新しいフォークと交換しました。すると、店長から「何をしているんだ」と怒られたので、胸を張って「お客様がなにか落としたので確認してフォークを交換しました。」と答えます。ここから想定外の指導を受けるのですが、「なんで最初からフォークを持って行けないんだ。何が落ちたかくらい音で聞き分けろ!」と言われたのです。その時は「音でシルバーか箸かはわかっても、フォークかスプーンかナイフかはわかるわけないだろう。店長は機嫌が悪くて新人の俺に八つ当たりしたんだろう。」と思っていました。ところがよく観察すると、できる先輩はこの音をおおよそ聞き分けていました。自分も担当ホールに集中して聞き分ける努力をすると少しずつ分かるようになり、音が聞こえたらすぐ替えのシルバー類を持っていくようにしたところ、お客さんから感動と称賛の言葉をもらいました。 これは私の意識が高かったから出来たのでなく、店の当たり前のレベルが高かったからだと思います。 同じことができないと同じ店員、仲間として恥ずかしかったのです。 私の「当たり前のレベルが上がれば、業績も向上する。」「当たり前にするべきことが何かを決めて、共有し、徹底する。」という支援方針はこの時の経験がもとになっているような気がします。 またこの店の社長は複数店を経営するとても個性的な女性でした。鹿児島弁がキツくて見た目もさえないので皿洗いばかりさせられていた学生の私に、「あなたは将来経営にかかわる仕事をするかもしれないからたくさん本を読みなさい。」といって司馬遼太郎の「坂の上の雲」全巻をプレゼントしてもらったことがあります。 こんなにかけがえのない経験をさせてもらったのになぜ厳しい業界だと思うのか。 理由は主に2つです。 1つ目の理由は、競争環境が激しすぎるからです。本当においしい料理と良いサービスを良心的な価格で提供する既存の店がたくさんある上に、新規参入も多い業界です。特に福岡は安くて味もサービスも良い既存店が多い。「特別資格もいらないし自分でもできると思って・・」と軽い気持ちで参入し失敗する人が後を絶えません。軽い気持ちで参入するには初期投資も月々の固定費も高すぎます。 2つ目の理由は、顧客の気持ちが移り気だからです。流行や社会の変化を直撃し業績が不安定になりやすいです。まさに水物の商売です。半年前まで破竹の勢いだった店が今は閑散としている事例は皆さんよくご存じだと思います。いまは新型コロナウイルスによる外食自粛で苦しんでいる飲食店オーナーがたくさんいらっしゃいます。本当に大変な状況です。胸が痛くなります。 以前、成功している飲食店経営者と酒を飲みながら話してよく覚えている言葉があります。「多くの飲食店が女性をターゲットにしますが僕は避けています。女性は流行に敏感で店を浮気します。その点中高年男性は気に入った店を長く使ってくれます。」という言葉です。女性をターゲットにすること自体が間違いということではないのですが、飲食業においてどうやって売上を安定させるか、経営者が知恵を絞っていることを肌で感じました。

とはいえ、相談を受けた会社には成功してもらいたいです。飲食店を支援する際にはターゲット像を明確にして店のコンセプトづくりをすることを大切にしています。コンセプトを明確にしてから店のデザイン、メニューブック作成、Webサイト、MEOやSNS、口コミ対策などを提案しています。サービスプロセスの見直しや教育も行っています。もちろん、現在進行形(新型コロナウイルスの影響)で資金繰りが悪くなっている店には資金繰り対策が第一優先です。


「二つ星の料理人」と「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」の二つの映画を観て、20年前の空気感がよみがえってきました。 厨房に響く怒鳴り声やスタッフどうしの喧嘩、厳しいお客さんがテーブルに着いた時の緊張感、お客さんが満足した時や1日当たりの売上が過去最高を記録した達成感などなど。

「二つ星の料理人」の主人公は、最初に働いた店で「1日20時間、週6日働いた」と言っていました。私が飲食店で働いていた時にもそんな人は結構いました。当時の仲間で今では複数店舗のオーナーになっている人もいますし、うまくいっていないと伝え聞く人もいます。 二つの映画とも良かったです。 しかし一つだけ残念な点があります。特に「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」のシェフは他人の資本で店を出すのでなく、自分でやってほしかった。自分のやりたいことを実現するために料理長をしていた店を飛び出したのに、人に雇われたらまた制約を受けることになるし、最初は良くてもいつか対立するだろう。と思ってしまいました。 これは長く会社員をしたのちに独立した私の偏見だとわかっていますが。


73回の閲覧
連絡先

© All Right Reserved 林中小企業診断士事務所

〒810-0014 

福岡市中央区平尾1-8-22 ロマネスク平尾第3-1001

Tel:090-8767-1257

Mail:hayashi@officekou.com

  • YouTubeの
  • Facebook Social Icon
  • Instagram