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不純な動機で読んだら爆笑した本

「自分とか、ないから 教養としての東洋哲学」読後録


私が哲学書を手に取るモチベーションは、主に二つだ。

1. 「とにかく楽に生きていきたい」

2. 「知的な自分に酔いしれて、カッコつけたい」

……我ながら、情け無い。

まず「カッコつける」ための最高級ブランドといえば、西洋哲学だ。

「実存主義がさ……」なんて語れたら、それだけで知的なオーラをまとえる気がする。 しかし、読み始めると2ページで絶望する。 まず、何を言っているのかサッパリわからない。

頭が良すぎてどこか遠くへ行ってしまった人の言葉に思えるし、現代の「先生」と呼ばれる人達が解説した入門書を読んでも、「……は? これで分かりやすくなってるつもり?」と逆ギレしたくなる。 さらに決定的なのは、多少理解できたところで「生きるのが楽になる」実感がほとんど湧かないことだ。

私のように、「生きてくのって割としんどいから楽になる方法書いてないかな」とか、「中小企業診断士として、経営だけでなく哲学にも通じているカッコいい男だと思われたい」程度の浅はかな動機で足を踏み入れると、西洋哲学の霧の中で遭難することになる。


そこで、東洋哲学だ。

仏陀の哲学は非常に実用的で、生きるのを楽にしてくれる。 その世界観はクールでカッコいい。

ただ、もし誰かに「趣味は東洋哲学です」なんて言われたら(実際に会った事はないが)、私は一歩引いてしまうだろう。 「高い戒名とか、謎の開運グッズとか買わされないかな……?」と心配してしまいそうだ。

(※完全に個人の偏った意見です。すみません)

そんな「浅はか」で「偏見まみれ」な私の思い込みを、爆笑とともに粉砕してくれたのが本書『自分とか、ないから』である。


哲学書なのに、なぜか「爆笑」してしまう

本書の最大の特徴は、大真面目な哲学の解説書なのに、腹を抱えて笑えるという点だ。

例えば、大乗仏教を切り拓いた「龍樹」の人物像。 著者は彼を、「インド哲学会の論破王。なんか凄そうだけど、友達にはなりたくない『ひろゆき』みたいな人」と表現する。 この瞬間に、難解な概念が急に親近感のあるものに変わる。

また、親鸞の「悪人正機説(悪人こそが救われる)」を解説する章では、「偉いお医者さんから、『たくさん食べたら痩せられます』と言われたら、めちゃくちゃ嬉しくないですか?」という例えが出てくる。 あまりに分かりやすすぎて、笑いながらコーヒーをこぼしてしまった。

気分転換に最適で、もはやエンタメ。 疲れた時のスマホスクロールと同じくらい気楽に読み終えられる。 気づけば私は著者のファンになり、3日間で4回も読み返してしまった。

……どんだけ人生に疲れてたんだ、俺。

著者はかつて芸人に挑戦した経験があるらしく、難しい内容を笑いに切り替える視点がとにかく秀逸なのだ。


東洋哲学のドリームチームが教える生きる術

本書では、東洋哲学を「哲学するための哲学」ではなく、「生き抜くための実践的な武器」として紹介している。

ここで、著者が選んだ7人の巨人の教えを、私なりに一言でまとめてみる。

1. ブッダ(無我): 変わらない「自分」なんて最初からないんだよ。そう思えば苦しくないよ。

2. 龍樹(空): 「本当の自分」とか考えるから苦しい。この世は全部フィクションなんだから、本当の自分とかなくていいよ。

3. 老子(道): 自然のルール(タオ)に乗っかって、ありのままでいると最強になれるよ。

4. 荘子(道):  「あいつの方が凄い」とか比べるのやめようぜ。宇宙視点で見たら全部同じ。もっと自然体でいいんだよ。

5. 達磨大師(禅): don’t think.feel 考えるな感じろ。

6. 親鸞(他力): 無理しなくていい。ダメな自分を認めたら大きな力(他力)で自動的に救われるシステムになってるから。

7. 空海(密教): 欲求あっていいじゃん!欲望を巨大なエネルギーにして、今この体で仏になろうぜ!

この東洋哲学レジェンドたちの教えが、しんめいPさんの軽妙な語り口で展開される。

共通するのは、「変わらない自分」と言う妄想を追うのはやめて、自然体でいなさい。と言う事だ。


経営視点にすると、永遠に通用するビジネスモデルなどないから、その時に応じてしなやかに変わった方がいい。とか、他人と比べて売上規模にこだわるより、時には売上を下げてでも利益を残す姿の方が自然体になって強い。とか、原理原則から逸脱した不自然なやり方は長続きしない。とか。

生き方を楽にする考え方は、経営を楽にする(=安定して無理せず利益を出す)と言う考えにもつながる。

経営支援の現場では、なかなか(利益よりも)売上至上主義から離れなれない経営者と議論が対立する事がある。

社長に向かって「don’t think  feel  考えるな、感じろ!」とは決して言えないが、状況に応じて「自然な姿は変わる」事という事を上手く伝えられるようになりたい。


創業・起業する人にはいろいろな思いがある。 思いつくだけでも大きく4つあって、1.成功したい2.好きな事をしたい3.他人が作った組織の中では生きづらい4.社会を良くしたい、だ。だいたいの人は混ざっているが思いの割合が違う。

どれが偉いとか悪いとかはない。 私自身も全部混ざっていた。いや、正直に言うと最初はほとんど1と2と3で、最近になって4が増えた。

思いはそれぞれ違っても、自力でキャッシュフローをプラスにする、という原理原則だけは外せない。これを外すと不自然な姿になっていつか破綻する。


著者の「挫折まみれ」の半生が、言葉に重みを宿す

著者のあとがきには、「読後録をSNSに上げる時は、どの哲学者が一番好きだったか教えてください」とあった。

私の答えは決まっている。断然、著者の「しんめいP」さんだ。

東大法学部に現役合格し、リア充な大学生活後、大手IT企業へ入社。 しかし、そこから挫折して退職。 今度は離島での教育事業に参加するも挫折。 芸人を目指してR-1グランプリに挑戦するも一回戦敗退し挫折。 さらには離婚し、実家で引きこもり……。

この圧倒的な状況で東洋哲学に出会い、彼は見事に復活した。 東洋哲学を実践し、引きこもりを脱して再婚も果たし、この本を書いたそうだ。

生き方がなんかすごい。 まさに「生きるための哲学」を実践してくれている。

凄まじい読書量と知識と理解力があるはずなのに、それを笑いにできるところが更にすごい。

圧倒的な力を持っているが、あえて相手が受けやすい技を出して、ユーモアを交えて遊びながら教えている。 王者の振る舞いだ。 自分もそうありたい。

読書していて良かった、と心から思う。

最後に:私の2つのニーズはどうなったか

さて、最後に私が哲学書を読む2つのニーズに戻ろう。

私にとってこの手の本を読む1つ目のニーズは、「生きてくのって割としんどいから楽になる方法書いてないかな」ということだった。

もっと具体的に言うと、「自然や宇宙に比べたら自分の悩みとかどうでもいい小さな事だな」とか、「生きる意味とかもともと無いんだから、楽しんだらそれでいいんじゃね」と思えるようになる事である。

そういう意味で、この本はタイトルの『自分とか、ないから』の通り、自然体に生きる手助けになった。しかも笑わせてくれるんだから、気分も前向きになって最高だ。

もう一つの重要なニーズである、「この人、中小企業診断士で経営も哲学もわかっててカッコいい、って言われたい」について。

……これに関しては、残念ながら体感的に効果を感じなかった。

運動や食事のように、時間をかければ体感できるようになるのかもしれない。 今後に期待である。


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